ex.2_1 ■ いろいろなフェルト - 花はどこまでも(Hさん)-
Hさんは、適当とか、ノリとか、気分とか、仕事にはそういうの要りません、そういう方です。
細かい作業が続いているので、今日は体調が優れないと聞いているので、と休憩を促しても渋々です。
私のように休憩と言われてヤッホーとはなりません。
非常に根気があり、手を抜かず、羊毛フェルトを作るベースを内面にお持ちの方でした。
そんなHさんの好きなものはお花です。
そもそもHさん自身が小さく可憐なお花のようでした。
彼女のことを思うと淡いピンクのミニバラが浮かびます。
ときどき鋭いひとことで、私に「障害のあるひとの自立」について深く考える機会をくれました。
それで、Hさんに創作の時間はお花の刺繍やってみようか、と持ちかけました。
デザイン画の時点では画用紙に小さなお花がポツンポツンと描かれていたのですが
いざフェルト刺繍を始めると、「スキマが気になる」というので
じゃあ布ぜんぶ埋め尽くすのはどうでしょう!と提案したら、気合でぜんぶ埋め尽くしてくれました。
とても時間がかかりました。何本も針を折りました。
折れた針先が見つからなくて、ハンディ金属探知機を買いました。見つかりました。
ポキンポキンと折れる針とは対照的に、Hさんの心は一回も折れずに最後まで刺しきりました。
布が続くかぎり、花畑も続いていくのではないかと思います。
羊毛の色も配置もHさんが自分で決めました。
濃淡のピンクを最初に選び、最後に選んだのがビリジアン。
おおっ!?と思いましたが、できあがった作品をじーっと眺めていると
濃い緑の「心に残る感じ」がいいなぁと思います。